第2章 住宅融資制度の基本知識

住宅融資(ローン)の種類と返済方法

1.住宅ローンの種類

住宅ローンには様々な種類があります。ほとんどの住宅ローンは銀行など民間金融機関によるものを指しますが、このほかにも保険会社やノンバンクといわれるローン会社などによるものがあります。また、公的な性格の住宅ローンとして、財形住宅融資があります。 主流は民間金融機関による住宅ローンですが、その中にも今はインターネット系のものが目立つようになったほか、住宅金融支援機構と民間金融機関の提携による「フラット35」と呼ばれるタイプの住宅ローンも多くなってきました。 一つの金融機関がいろいろな種類の住宅ローンを手がけながら、利用資格や借入条件などに工夫を凝らして目白押しに並んでいる状態です。

2.住宅ローンを選ぶポイント

それだけに、住宅ローンを利用するときは自分にとって一番ふさわしいメリットのあるものを選ぶことが大きなポイントになります。したがって、できるだけ時間をかけて借入申込の前に下調べを済ませておくことが望まれます。 そのためには、インターネットなどでそれぞれの住宅ローンの特徴をよく確かめて、自分に向いた利用条件を見つけた上で、銀行の住宅ローンセンターなどの相談窓口で『自分向きの住宅ローン』を選び出すことがとても大切です。

3.住宅ローン選びの手がかり

ここでは自分向きの住宅ローン選びの手がかりとなる、金利のタイプをご紹介します。 (1) 固定型金利 返済期間が全体を通して変わらないタイプの金利。借入申込をした時点での金利がずっと変わらないので、先行きの見通しでプラス面とマイナス面が分かれます。プラス面をメリット、マイナス面をデメリットとしてまとめたものが下の表です。
メリット デメリット
低金利時に借りれば、返済が始まった後将来の金利が上昇しても心配がない。 返済が始まった後金利がさらに下降すると、金利低下による返済額減少を利用できない。
固定型金利の代表的なものが「フラット35」です。資金の受取りから返済終了まで借入金利・返済額が変わらない住宅ローンです。

フラット35

「フラット35」は、住宅金融支援機構が銀行などの民間金融機関の住宅ローン債権を買い取る仕組みを前提とした住宅ローンです。 先々の金利事情を考えて、民間金融機関が手がけにくい長期間の固定型金利の住宅ローンの貸出に伴う権利を住宅金融支援機構が買い取るため、貸し出した金融機関は将来の金利変動を心配しないで済むような仕組みになっています。 こうした仕組みですが、住宅ローンに伴う債権は貸し出した金融機関から住宅金融支援機構に動くだけで、借り入れた人にとっては金利や返済期間などの契約条件はまったく変わりません。返済は、最初に借り入れを申込んだ金融機関が窓口となります。 簡単にいえば、民間金融機関だけでは実現しにくいタイプの住宅ローンを住宅金融支援機構が債権買取という方法でバックアップする考え方で実現した長期固定金利型住宅ローンです。 <主な特徴>
  • ・最長35年の固定金利であること ※金利は毎月変わります。
  • ・保証料が要らないこと
  • ・繰り上げ返済する時の手数料が要らないこと
  • ・目標となる住宅に独自の技術的なチェックがあること
なお、フラット35はほとんどの民間金融機関で申込むことができます。 (2) 変動型金利 返済が始まった後、経済情勢に対応して変わる仕組みの金利。借入申込の時点での金利が返済終了までの間に上がったり下がったりするので、将来の見通しでプラスとマイナスが分かれます。返済が始まった後の金利は、原則的に年に2度見直しされます。金利見直しの度に返済額が変わると大変なので、金利見直しによる返済額の変更は5年に1度となっています。また金利引き上げで返済額が増えるときは返済額の上昇幅は最大25%までと決められています。 なお、金利見直しによる返済額の変更によって元金と利息の割合が変更するため、返済総額の増え方が25%までとなっていても利息相当分は差し引かれますので、ケースによって借入元金分の減り方が見込みよりも遅れる場合があります。 変動型金利のプラスをメリット、マイナスをデメリットとしてまとめたものが下の表です。
メリット デメリット
固定型金利よりも低いことが多い。 借り入れの時点で固定型金利に比べて金利が低い場合でも、返済開始後に逆転する場合がある。金利が上がって返済額が増えた場合、未収利息が発生し、未返済残元金が増える可能性もある。
(3) 固定期間選択型金利 固定型金利ではありますが、返済開始後の金利を一定期間だけ変更しない仕組みの金利です。金利を固定して変更しない期間の年数によってタイプが分かれます。金利を固定する期間が終わると、その時点の金利が適用されます。固定期間は2年~5年の短期から20年~35年といった長期まで用意されているタイプの中から自由に選べますが、固定期間が長いほど金利が高くなり、短いほど低くなります。
メリット デメリット
固定期間が終了した後、状況に応じて、固定金利か変動金利かを選べる。 金利固定期間の見込み方が難しい。固定期間の長短の見極め方の難しさは固定型金利と同じ。
財形住宅融資の金利は5年ごとに固定金利を見直すという意味では「固定期間選択型」のイメージに近い住宅ローンといえます。 変動型金利、固定期間選択型金利の住宅ローンはほとんどの民間金融機関で扱っています。また、取引関係によって利用できる金利優遇型住宅ローンなど様々な仕組みの金利が用意されています。 <主な特徴>
  • ・金融機関によっていくつもの種類がある
  • ・固定期間終了後の金利見直しによる返済額の変更には、総返済負担率が25%以内といった上限がない
  • ・固定期間終了後、選ぶ金利のタイプによって手数料が要る場合がある
  • ・申し込む人の条件によって、ある程度弾力的な取扱いがある
住宅ローンを選ぶ際には、それぞれの商品の特徴を理解し、ご自分のライフスタイルや状況に見合ったタイプを選択することが大切です。また、金利上昇のリスクを避けるために固定型と変動型を組み合わせて利用することもできますが、この場合はタイプの細かい条件によってどういう違いがあるかを相談窓口などで確かめておくことがとても大切です。

4.返済方法

住宅ローンの返済方法には、「元利均等返済」と「元金均等返済」の2種類があります。どちらの方法も毎月の返済額が元金と利息の合計額で決まる点は同じで、毎月の「返済額」を一定にして返済するのが元利均等返済、「元金」の返済額を一定にして利息を加えた額を返済するのが元金均等返済です。両者においては、返済における実感も違います。 (1) 元利均等返済 毎月の返済額である元金+利息が一定ですから、返済期間全体を通じて返済額は最後まで常に変わりません。ただし、毎月返済額は同じでも、元金と利息の割合は毎回変わります。返済が始まってからしばらくの間は元金相当部分が少なく、利息相当部分が多くを占めます。そして、初めは少ない元金相当部分は、返済期間が経過するにつれて段々と多くなっていき、一方で利息相当部分は段々と少なくなっていきます。 <主な特徴>
  • ・毎月の返済額が一定なので、計画的な家計支出ができる
  • ・ある程度の返済期間が過ぎるまでは返済が進んでいることを実感しにくい
  • ・元金均等返済(後述)に比べると、返済総額が多くなる
  • ・繰り上げ返済をする場合は、できるだけ早い時期の方がよい
(2) 元金均等返済 毎月の返済額である元金+利息が一定である点は元利均等返済と同じです。ただし、毎月の返済額における利息相当部分は毎回変わります。 この方式では、利息がまだ返済されていない残元金に対して計算されますので、まだ返済が始まっていない第1回は当然ながら未返済残元金が最大です。したがって利息も最大になります。第2回の返済では、1回分だけ返済が進んでいますから、未返済残元金が少し減っています。利息もそれに対応してちょっと少なくなります。 こうして返済回数が進むほど未返済残元金が減っていき、それに対応して利息も少なくなっていきます。 こうして、返済額が元金+利息であっても、内訳の元金と利息が毎回変わりますから、この方式では最初の返済額が最大で、以後は回数が進むほど返済額が少なくなっていきます。 <主な特徴>
  • ・新しい住宅を入手した初めの段階での返済額が最大なので、教育費などほかの支出が重なる場合は家計支出の負担が重くなる。
  • ・初めのうちは重かった返済負担が回を追って少なくなっていくので、返済の進み方が実感できる。
  • ・支払利息の総計が元利均等返済より少なくて済む。
  • ・繰り上げ返済の時期を一にしても有利不利の違いがない。
多くの場合、金融機関側では元利均等返済を中心にした説明をする傾向がありますが、元金均等返済を利用できる場合も少なくないので、借入申込前の相談の段階などで、元金均等返済を利用できるかどうかを確かめてみるとよいでしょう。

5.ボーナス返済

住宅ローンの仕組みにおいては、ボーナス返済を利用できます。銀行によって「ボーナス月増額返済」などといった表現になる場合もありますが、意味は変わりません。毎月の返済と組み合わせて利用することにより、毎月の返済額を減らすことができるのが最大のメリットですが、次の点を十分に考えておく必要があります。
  • ・ボーナスは経済情勢や企業の経営状態で金額が変わりやすい不安定性がある。
  • ・借り入れの時に決めたボーナス返済は、契約後は変更できないので、ボーナス額の変動に対応できなくなる場合がある。
  • ・ボーナス返済に充てられる金額には、金融機関によって条件が決まっていることが多い。
ボーナス払いに充てる返済額は、できる限り比重の掛け方を小さくする方法も考えておきたいものです。

知っておきたい返済計画とローン控除

1.住宅融資の金利と返済期間

住宅ローンの金利はいわば“生き物”です。様々な社会経済事情の変化に対応して頻繁に変わるものですから、常に最新の金利をインターネットや金融機関の店頭表示などで確かめることが大切です。また、長期金利とか短期金利、あるいは長期プライムレートなどという言葉がニュースで見かけられるときは、住宅ローンの金利がいずれ変わると考えた方がよいでしょう。 こうした方法で確かめた金利が、自分の場合の返済額にはどういう影響をもたらすかを確認することも非常に大切です。住宅ローンシミュレーションのサイトを利用すると、自分の場合は「いくら借りると毎月の返済額がいくらになるか」を簡単に確かめられます。ただし、このサイトを利用する時は、自分が借り入れたい金額、自分が毎月返せる金額、自分が利用したい金利のタイプ、自分が希望する返済方法など、借り入れる人自身の考え方がはっきりしていなければなりません。 こうして自分に当てはめた場合、一番有利になる仕組みを選び出すことが、住宅ローン利用のポイントといえます。

2.ローンを利用した場合の「住宅ローン控除」

個人が住居用家屋を取得(賃貸住宅や別荘、セカンドハウス等は対象になりません)、または増改築をして、取得等の日から6ヶ月以内に居住し、その住宅の取得(住宅の取得とともにする、一定の敷地の取得を含みます)または増改築のために住宅ローンを利用したときは、居住を開始した年から一定期間所得税の一部が戻ってくる制度です(控除しきれない場合は翌年の住民税から控除)。

3.住宅ローンの見直し

住宅ローンを利用すると、多額のお金を長い年数をかけて返済することになります。返済期間については、返済のしやすさを考えて、長い期間を選ぶことも珍しくなく、35年といった長い期間にわたることもあります。 こうした長い年数の間には、当然いろいろな事情が変わります。年数が経てば生活の様子が変わるはずですし、仕事の事情が変わることも珍しくありません。 しかし、住宅ローンの返済は生活や仕事にそうした変化があっても、借り入れの段階で決めた返済条件はまったく変わりません。そこで、年数が経ったときに住宅ローンの返済方法を見直した方がよいケースが生じます。なぜなら、見直しによって、高い金利で計算した返済額が、低い金利の返済額に切り替えられる可能性が生まれ、切り替えが実現した場合、それだけ楽になるからです。 また、返済を続けながら資金に余裕ができれば、予定よりも早く返済する「繰り上げ返済」という方法をとれば、毎月の返済額を減らしたり、返済期間を短縮したりすることができます。この方法をとる場合に、まとまったお金を一度に返済する「一括返済」という方法なら、まとめて繰り上げ返済した分は元金に充当され、利息の支払いもが少なくなりますから、総返済額を減らすこともできます。 住宅ローンの見直しは、借り入れの段階ではあまり考えないものですが、繰り上げ返済などについては、返済途中で返済額を増減できるプランを用意している金融機関もありますから、こうした点についても最初の融資を受けるときによく確認してみてください。 なお、繰り上げ返済には手数料が多くかかるケースもあります。また、新しく借り換える方法を考える場合には、繰り上げ返済のタイミングなども大事な検討事項になります。借り換えや繰り上げ返済の試算は住宅ローンシミュレーションをご利用ください。