売買代金の支払と登記手続き
1.売買代金の支払の流れ
ある物件の購入意思を固め、その申込みから物件の引渡しを受けるまでにはさまざまな名称で売買代金を支払います。一般的な代金支払いの流れは次の通りとなります。
(1)申込証拠金
その物件を購入したいとする意思表示のための証拠として、または、申込み順位の確保のため、一般的に5万円~10万円程度を不動産業者に預けることが多いようです。
(2)手付金…売買の本契約締結時
手付金は売買契約を締結する際に、契約当事者の一方から相手方に対して交付される金銭その他の有価物をいいます。手付金は契約が約定どおり履行されるときは、売買代金の一部に充当されます。
(3)内金(中間金)…買主の履行の着手
内金は売買代金の一部弁済金をいい、前払いの性格を持っています。売買代金の全額を一時に支払わず、2回以上に分けて支払う場合の最終残代金以外のもので、内入金とも呼ばれています。買主が売買代金の一部である内金を売主に支払ったときには、買主は契約の履行に着手したことになり、売主は手付金を倍返しして契約解除ができなくなります。
(4)残代金…本物件の引渡し時または融資実行時
売買代金の残金や諸費用を支払って、物件の登記を行います。
残金は売買代金から既に支払っている申込証拠金、手付金、内金を引いた金額になります。残金が融資額より多い場合はその分を現金等にで準備しなければなりません。
また、建物の引渡しから住宅ローンの実行までに期間がある場合は、一時的に銀行などからつなぎ融資を受けることが必要になります。
2.登記手続きの進め方
新規分譲マンションや建売住宅の場合には、登記の手続きは不動産会社が手配してくれますが、中古物件を購入したり、媒介等で自分の不動産を手放したりする場合には、所有権の移転登記手続きについてもある程度の知識をもっておく方が良いでしょう。
登記がなぜ必要かといえば、登記は第三者に自分のものだと主張できる対抗要件になっているからです。
例えば、貴方がある土地を購入したとします。ところが売主は同じ土地をAさんにも売っていたとしたらどうなるでしょうか。当然貴方はAさんと土地の所有権の移転を巡って争うことになります。しかし物権変動を第三者であるAさんに認めさせるためには、貴方名義の登記がなければ先に登記したAさんに負けてしまうのです。
物件の瑕疵(隠れたキズ)とアフターサービス等
1.購入した物件に瑕疵があった場合の取り決め
不動産の売買契約を結んだ売主は契約に定められた通りの完全な物件や権利を買主に給付することを期待されています。それなのに物件に瑕疵(隠れた欠陥)があった場合には、売主は一定の責任を負わなければなりません。「瑕疵」とは「キズ」のことで、ここでいう「隠れた」というのは通常の一般人が世間並みの注意を払ってもその存在が分からない場合をいいます。これを「売主の瑕疵担保責任」といい、民法上、売主は瑕疵担保責任を負わなければなりません。また、特約により瑕疵担保責任についての特約を結ぶこともできますから、契約締結時には必ず確認が必要です。
2.アフターサービス基準とは何か
隠れた瑕疵が民法上の瑕疵担保責任の対象となるかどうかを売主・買主が争っていたのではなかなか問題解決には至りません。そこで新築物件の売主が自主的に建物の部位別に欠陥部分の補修を約束している場合があります。これがアフターサービスです。
購入した物件に買主が欠陥(瑕疵)を発見して売主に通告しても、売主側がその欠陥を通常予想される商品の状態を逸脱した欠陥だと承諾しなければ、結局裁判で争うしかなく、時間とお金がかかるほか、欠陥に対する迅速な対応がとれません。
そこで、売主が営業ツール又は消費者サービスの一環として自主的に欠陥部分の補修を無償で行うものがアフターサービスであり、売主が約束した部位別のサービス期間内については、買主の使用責任や経年変化等を除いて、欠陥部分を迅速に補修する業者の自主的サービスです。
3.新築住宅の10年間瑕疵保証制度
「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」により、新築住宅の売主等は、新築住宅のうち構造耐力上主要な部分(構造躯体)と雨水の浸入を防止する部分(屋根、外壁の仕上、下地等)について、10年以上の瑕疵担保責任が義務付けられています。また、国土交通大臣の登録を受けた住宅性能評価機関が工事会社や不動産会社等からの依頼に基づいて個別の住宅の性能をチェックし、住宅性能評価書を交付する制度(任意)もあります。
4.瑕疵担保責任履行のための資力確保
せっかく10年以上の瑕疵担保責任を義務付けても、売主等に十分な資力が備わっていなかったり、経営破綻した場合には、瑕疵担保責任が履行されない恐れがあります。そこで、品確法に規定する新築住宅を対象に、1.保証金の供託、または 2.住宅瑕疵担保責任保険への加入により、資力を確保することが義務付けられています。